東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2699号 判決
二 以上のような事実関係の下において本件駐車場が本件マンションの専有部分であるか構造上の共用部分であるかについて検討すると、先に認定したような本件マンションの地下一階の構造及び状況に照らせば、本件駐車場は、それが共用設備の設置場所又は共用部分としての機能をも併有するかどうか及びその程度の如何はともかくとして、本来駐車場として使用することを目的として建築されたものであることがその客観的な構造上明らかである。そして、近時における自動車の普及状況や本件マンションの立地条件下における駐停車状況等を考慮に入れても、マンション等の共同住宅に附設された駐車場には特段の事情がない限り共用性があり当然に共用部分になるとまではいうことができない。
そして、建物の区分所有等に関する法律一条の規定にいう「一むねの建物に構造上区分された数個の部分で独立して建物としての用途に供することができるもの」(専有部分)に当たるということができるためには、当該建物部分が所有権としての支配が及ぶ客体の範囲が客観的に明確である程度に構造上の独立性を有し、かつ、当該建物部分が独立の経済的価値を持つ程度に利用上の独立性を有するものでなければならないものと解されるところ、これらの構造上及び利用上の独立性の有無は、当該建物部分の客観的な構造上の用途ないし利用目的に照らして判断されるべきものと解するのが相当である。しかして、本件駐車場は、その東南隅の車両用出入口に扉、シャッター等の設置がなく常時開放されているけれども、それはかえって駐車場としての用途に適合するところであって、居住用建物等の場合とは異なり、周囲のすべてが完全に遮蔽されていないからといって構造上の独立性に欠けることになるものではなく、その余の部分は隔壁、階層等によって遮断され又は他の部分と区分されているのであるから、これをもって構造上の独立性を有するものとするに十分である。
三 次に、本件駐車場は、以上のようにそれ自体独立の建物としての用途に供することができるような構造上の独立性を有するけれども、他方、本件駐車場の一部には本件マンションの共用設備が設置され又は本件駐車場に接して共用部分が設けられていて、これらの共用設備又は共用部分を管理、使用し又はそこへ到達するためには、本件駐車場を使用するほかないことは、先に認定したとおりである。したがって、本件駐車場は、これら共用設備の設置場所又は共用部分への通路としての機能を一部に帯有していることも否定できないところであって、果たして駐車場としての利用上の独立性があるといえるかが問題となる。そして、このような場合において当該建物部分が利用上の独立性を有し専有部分に当たるということができるためには、当該建物部分に設置された共用設備の占める割合が限られていて、それ以外の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異ならない態様の排他的使用に供することができ、かつ、他の専有部分の区分所有権者による共用設備の利用、管理又は共用部分への通路としての使用によって右の排他的使用に格別の制限ないし障害を生じることがなく、反面、このような排他的使用によって共用設備の保存所有権者らによる利用又は共用部分への通路としての使用に格別の影響を及ぼさないものでなければならない(最高裁昭和五六年六月一八日第一小法廷判決・民集三五巻四号七九八頁、最高裁同年七月一七日第一小法廷判決・民集三五巻五号九七七頁参照。)。そして、ここに等しく排他的使用といっても、当該建物部分が居住目的のものであるのか駐車場目的のものであるのかなどによって著しく異なるのであるから、以上の利用上の独立性の有無についても、当該建物部分の客観的な構造上の用途ないし利用目的に照らして判断されるべきことは、先に説示したとおりである。
これを本件についてみるに、本件マンションの地下一階に設置された共用設備又は共用部分は確かに多様にわたってはいるものの、これらのうち天井に張り巡らされた各種配管については、本件駐車場専用のものが多く含まれているほか、これらの配管が露出したままとされているのは、天井板等でこれを覆い隠さなくても駐車場として美観上の問題が生じないことによるものであって、その維持、管理上の必要によるものではなく、これらの共用設備の存在又はその維持、管理と本件駐車場の駐車場としての排他的使用とが競合する場合はほとんどないものといってよい。また、本件駐車場に接して設けられている前掲のポンプ室、電気室(なお、電気室1は、本件駐車場に属するものとして表示登記がされているけれども、それによって右電気室が共用部分でなくなる訳のものではなく、また、それによって本件駐車場が専有部分かどうかが影響されるものではない。)、高圧受電室並びに本件駐車場内に設けられているオイルポンプ置場、電話端子盤及び配電盤については、必要の都度本件駐車場を通路として使用してこれら共有部分又は共用設備に到達することさえできれば、これら共用部分又は共用設備の機能を十分保持することができ、それ以外の態様による本件駐車場の使用が必要とされる場合はほとんど考えられない(控訴人らは、これらの共用設備等の拡張、増設、新設等の必要が生じた場合を想定して本件駐車場の共用部分性を主張するけれども、先に説示したような本件マンションの地下一階の構造からすれば、この建物部分がこのような共用設備等の拡張、増設、新設等を予め想定したものとは到底認められない。)。そして、本件駐車場の排他的使用といっても、居住目的等の建物の排他的使用とは異なり、これらの共用部分又は共用設備への通路としての本件駐車場の使用を排斥するものではないし、反面、本件駐車場が右のような目的のために通路として使用されても、駐車場としての性質上、なんらその使用の排他性を害されるものでもない。そして、本件マンションの地下一階床下に設けられている前記受水槽等については、その維持、管理等のために本件駐車場内のマンホールを開いて清掃、点検等の作業をするなどの必要があり、自動車の駐車方法等の如何によっては、本件駐車場の右のような目的のための使用と駐車場としての排他的使用とが競合する余地がない訳ではないけれども、先に認定したとおり、右受水槽等の共用部分の点検、清掃等のためにマンホールを使用しなければならない場合はそれほど多くはないのであるから、必要な場合には建物の区分所有等に関する法律六条二項の定める請求をすることなどの方途を採ることによって十分対処することができ、右の程度をもっては、未だ本件駐車場の排他的使用が右共用部分の清掃、点検等に格別の障害を与えるものとはいえず、また、右マンホールの存在又はその使用が本件駐車場としての排他的使用を妨げるものともいえない。
以上のとおりであるから、本件駐車場は、これら共用設備の設置場所又は共用部分への通路としての機能を一部に帯有しているけれども、未だ駐車場としての利用上の独立性を有しないものということはできず、それ自体独立の建物としての用途に供することができるものであって、本件マンションの専有部分に属するものと解するのが相当である。
したがって、本件駐車場が構造上の共用部分であるとする控訴人らの主張は、失当であって、採用することができない。
(西山 越山 村上)